■ テロメアは細胞分裂ごとに短くなり、ある一定の長さまで縮むと細胞分裂が止まるので、細胞寿命タイマーとして知られています。テロメアが短くなると、がんをはじめ様々な疾患につながることがあります。元気な細胞では、このテロメアの長さを保つために、テロメラーゼという酵素が活発に働いています。つまり、テロメアの長さを調べることで、細胞の老化度や病気のなりやすさを知ることができます。

■ 弊社のテロメア検査は、血液から抽出したゲノムDNAを基に分析します。分析はテロメア研究者の手により行われるため、信頼性の高いものとなっております。

■ からだ注意報”AI検査”や”Prime-代謝産物検査”のためにお送りいただいた血液だけで、追加試料の必要なく同時にテロメア検査が可能ですので、上記検査と合わせてのご利用をお勧めいたします。

テロメアとは

テロメアは染色体(*)末端に位置し、ヒトではTTAGGGの塩基配列(*)が繰り返されている領域です。そのテロメアDNAとそこに結合するタンパク質との複合体が立体構造を構築し、染色体末端が保護されています(引用1)。

このテロメアDNAはDNA複製時にかならず短くなるもので、保護に必要な立体構造が失われる程度にテロメアが短くなると、細胞分裂を停止するスイッチが働き、細胞は休止状態(老化状態)となります(引用2)。そのようなテロメアをもつ細胞内では、さまざまな細胞内システムに影響を与えて、がんをはじめとする疾患の原因になります。殆どの場合、体内ではそのような老化細胞は排除されますが、体の代謝状態により老化細胞や異常な細胞が蓄積すると、体全体の不具合へと繋がる可能性があります(引用3,4)。

この遺伝情報の保存に不可欠な保護キャップとして機能する染色体の末端であるテロメアに関する分子的性質の発見と、テロメアを維持する酵素であるテロメラーゼの共同発見により、エリザベス・ブラックバーン博士、キャロル・グレイダー博士、ジャック・ゾスタック博士は、2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。多くのがん細胞ではこのテロメラーゼの活性が高く、テロメアの長さが維持されているため、分裂回数の限界がありません。この特徴を利用して、テロメラーゼの活性を抑える薬剤ががん治療の候補として研究が続けられています(引用5, 6)。

*染色体:遺伝情報を持つDNAがタンパク質とともに凝集し細胞核のなかで折りたたまれている構造体。ヒトは23対(46本)の染色体を有しています。
*塩基配列:DNAやRNAを構成するユニット分子。DNAは”A”,”T”,”G”,”C”の4塩基で構成され、その並び方が遺伝子情報として記録されている。ただし、テロメアのTTAGGGの配列には遺伝情報としての役割はなく、末端構造を形成するために必要な配列と考えられています。

1. “細胞から若返る! テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム”、エリザベス・ブラックバーン(著)、エリッサ・エペル(著)、森内薫(訳)、NHK出版(2017)
2. “Importance of TRF1 for functional telomere structure.”, Iwano T ,et al., J Biol Chem. (2004) Jan 9279(2):1442-8.
3. “テロメア 生命の回数券 健康長寿の秘密おしえます”、白鳥 早奈英(著)、 自由国民社(2009)
4. “Telomere dysfunction in ageing and age-related diseases”, Nat Cell Biol (2022) Feb;24(2):135-147. Francesca Rossiello, Diana Jurk, João F Passos, Fabrizio d’Adda di Fagagna.
5. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2009/press-release/
6. “Τelomerase inhibitors and activators in aging and cancer: A systematic review”, Mol Med Rep. (2022) May25(5):158. Persefoni Fragkiadaki, et al.

実際のテロメアを染色した像

細胞内の染色体をガラス板にはりつけ、特殊な染色液で染色体(青色)とテロメア(赤色)を染め分けた像です。染色体の端に赤く染められたテロメアがあることがわかります(左の写真)。右の写真は、老化した細胞から取り出した染色体の染色像です。テロメアが少なくなっていることがわかります。

テロメアの長さと分裂回数の関係

テロメアが長い細胞と短い細胞の増殖(細胞分裂の回数)を比較したグラフです。テロメアが長い細胞(赤、橙の線で表示)に比べて、テロメアが短い細胞(青、緑の線で表示)の方が増殖が活発でないことがわかります。